アイリス(ヒント④解答)

 
炎の矢は何処(誰)に当たるのか。
古くから議論されてきた問題に、ようやく終止符を打つ時が来ました。
矢は三美神の真中の女神に当たるという説がこれまで有力でした(それって、見たまんまジャン)。
でも、ヒント④の図版をよ〜く見て下さい。矢の延長線は、彼女の頭でも胸でもなく、左肩をかすめているだけです。これでは、贔屓目に見ても命中とは言えませんよね。



 
的は、意外なところに描かれていました。
画面右下隅の2輪のアイリス(菖蒲)のうち、左側の花が∨(♀)すなわちプシュケの女陰の象徴です(横糸①⑧⑪が一気に解明)。


画家はここで、この記号に対する並々ならぬ拘りを見せます。
「春」の中に描かれたエロスの矢は1本だけではありません。炎の点ってない矢が矢筒に残っているのです。そしてそれに呼応するかのように、アイリスも2輪描かれています。
矢を受け入れるべく開いた左側の花と、それを拒むかのような右側の花です。
エロスの矢の延長線は、画面中央を軸に線対称の位置に移し換えると(エロスを裏返しにすると)、正確に左側の花を射抜くのです。
これで∧と∨が合体し、2人の結婚が成立しました。


ところで、当然ながら大きな疑問が残ります。
「なぜ矢は的を直接狙っていないのか」ということです。
全部一気に答えてしまうとつまらないので、これは新たに横糸⑭としておきましょう。
どなたか知恵を絞ってみて下さい。


さてここで、私の方からお願いがあります。
凸版印刷株式会社が保有するDADDI(Digital Archive through Direct Digital Imaging:ウフィツィ美術館と共同開発した世界最高画質のディジタル画像)を利用して、矢の飛ぶ先を正確に検証したいのです。
凸版印刷の関係者の方がこのブログを読んでおられましたら、ぜひ協力願えませんでしょうか。
もちろん、検証結果がどうであれ、本サイトで報告したいと考えています(執筆中の「春の寓意」でも取り上げます)。
何卒よろしくお願い申し上げます。
(snow)