お化け屋敷1
京都市の西、嵯峨野まであと数kmというあたりに太秦(うずまさ)という処がある。古代史のファンなら大いに興味をそそられる程の、歴史的に由緒正しい土地(地元の学校ではそう教えている)なのだが、今ではすっかりベッドタウン化してしまい、往時の面影を残す石舞台式の古墳(蛇塚)も周りをすっかり住宅に取り囲まれてしまっている。
現在の太秦名物を強いてあげるとすれば、広隆寺の弥勒菩薩と、テーマパークのはしりともいうべき、某映画会社が営業する映画村くらいのものだろう。映画といえば、太秦はかつて東洋のハリウッドと呼ばれた程、映画作りの盛んな場所だった。松竹・東映・大映の撮影所が軒を連ね、怪獣ガメラの生まれ故郷もここ太秦であると言えば少しは理解に役立つだろうか。
その太秦の中心地=広隆寺からさほど遠くない場所に、地元出身の人なら知らぬ人のないお化け屋敷が建っている。
何故誰もが知っているのかというと、答はいたって簡単で、そのお化け屋敷が道路を隔てて太秦小学校のグランドの真正面に建っているからである。
今でこそ周辺地域の開発が進み、太秦地区の小学校も数を増したが、以前は小学校といえばこの太秦小学校しか存在していなかった。
私の記憶が正しければ(古いね)、小学校で写生大会が行われると、私以外のクラスメートはほぼ全員がグランドに出て真正面のお化け屋敷をスケッチしていた。という訳で太秦の、いや太秦小学校の出身者は恐らく一人残らずこの建物を記憶しているに違いない。
当時の私はというと、お化け屋敷には見向きもせず、何の面白みもない鉄筋コンクリート造の体育館を一人せっせと写生していた。したがって当然、図画工作の成績はあまり芳しくなかった。