ヒント③(ボッティチェリの春=プリマヴェーラの謎)

                               

昨夜ヒントめいたことをコメントに書き、早速みずかさんから回答が寄せられていますが、もう少し詳しく書くことにしました。


ご存知の方も多いと思いますが、「エロスとプシュケ」の物語は、こんな場面からスタートします。
そこでは女神アプロディテが、美しい人間の娘プシュケの存在に「おかんむり」です。
「パリスの審判でパラスやヘラよりも美しいとされた私が、どうして人間の娘などに負けるというのか〜」
そこで彼女はエロスを呼び出し、「誰か下賤なつまらない人に恋をさせてやるがいい」と息子に命じたのです。どこかで聞いたような話ですね。鏡よ鏡…


「エロスはお母さんの命令に従う準備をいたしました。アプロディテの花園には、甘い水と苦い水の二つの泉がありました。エロスは、この二つの泉の水を一杯ずつ二つの琥珀の瓶に汲み分けました。そうしてそれを箭筒の先に下げて急いでプシュケの部屋へ行ってみますと、プシュケは眠っているところでありました。その様子を見ると気の毒になりましたが、それでも苦い泉の水を二、三滴その唇の上に落しました。そうしておいて鏃で脇腹を突きました。プシュケは突かれたので目を開けてエロスを見ました。でもその姿は見えませんでした。エロスはあわてたはずみに思わずその矢で自分にも傷を受けました。それとともに、自分のした悪戯を取り消したくてたまらなくなったので、今度は香ばしい悦びのしたたりをプシュケの絹のような巻毛に浴びせました。」(トマス・ブルフィンチ著、野上弥生子訳『ギリシアローマ神話』1978 岩波書店より引用)


これが、2人の出会いの場面です。
エロスの矢の先端は「金か鉛」で出来ているという説がありますが、この物語では「甘い水と苦い水」とされています。これも、どこかで聞いたような…
みずかさんの回答は「エロスは姿を見せられないのでは」という内容でしたが、厳密には違っています。ここは重要ですので、正確に言い当てて下さい。


さて、物語の中に矢が登場するのは、この場面(+最終盤でプシュケを突いて眠りから覚ます場面)のみです。
では、なぜ「春」の矢には炎が描かれているのでしょうか?
このモチーフは間違いなく画家のオリジナルです。しかも、「春」の場面はゼピュロスがプシュケを運んだ後ですから、エロスの矢は(恋に落ちるためではなく)別の目的で描かれていることになります。
炎の矢」の解説はもう少し先になりますが、まずはエロスの「目かくし」に明快な解答を与えて下さい(縦糸⑧、横糸⑥⑨)。
(snow)