的の探索

 


「春」の中央、少し奥まった位置にアプロディテ(ヴィーナス)が女王然として佇んでいます。
一般的解釈では、次のように理解されているようです。
・ヴィーナスは他の登場人物より一歩引いた場所にいてこの無言劇を司る役割を演じている。
・ヴィーナスの衣装や頭上の木々は聖母マリアの伝統的表現を象徴している。


ここには、彼女の右手についての記述はありませんが、かざした右手はまさしく聖母のポーズです。2/25のブログ 右手の考察に詳しいので、ぜひお読み下さい。
受胎告知におけるマリアのこのポーズは、(エッチせずに)神の子を身籠もったことを了解する意味の仕種です。
ちょっと脱線。
しっかし、キリスト教を創りだした連中は、無茶苦茶なことを考えたもんですね。
エッチせずに身籠もる〜ですって。今時の若いネーチャンが受胎告知されたら、ソンナ〜アリエネ〜と叫ぶところでしょうか。
ところが恐ろしいことに、現代ではエッチなしの妊娠が有り得るのです。
体外受精代理母と言えば、すぐにピンときてもらえるかと…
代理母までは、さすがのボッティチェリも想像出来なかったと思いますが、彼は「春」の中になんと体外受精を描いています。


話を戻しましょう。
画家が女神を、聖母と見まごうばかりに描いた理由はたった1つ、それは「受容」です。
マリアがキリストを宿したことを「受け入れた」と同じように、「春」のアプロディテは、ここで「エロスとプシュケ」の結婚を「受け入れた」のです。
そして女神の侍女カリテス(三美神)たちが表しているのは「祝福」。
ということであれば、どこかに2人の「結婚」が描かれていなければ話になりません。
すでに述べたように、矢がエロスの男根∧を表徴しているとすれば、探すべき的はプシュケの女陰∨です。
2つのシンボルが合体することで、結婚(体外受精)が成立すると、画家は考えたようです。


今回の図版はいつもとちょっと違っています。
黒の□が「春」のアウトラインです。赤の斜線はエロスの矢のライン。一点鎖線は絵の中心軸です。
赤線と中心軸の交点E´が画面の上に飛び出していることから、画家はこの位置にピンを刺し、そこからC´に向けて糸を引っ張ったものと想像出来ます(大工さんが墨を打つ要領)。
このライン上に∨が描かれていれば話は簡単ですが…
そこに出てくるのは、中央の女神の左肩、左の女神の右太腿、そしてヘルメスの刀と右足です。画面を参照して下さい。
なんか今一ですね。


そこで、次に思いつくのが反対側(緑)の斜線です。
エロスが画面の頂点ともいうべき位置に描かれており、そこから左下隅に矢が向けられているために、否が応でも反対側のラインが暗示されることになります。
今度は画家は、E´から(CC´=DD´の関係になる)D´に向けて、糸を引っ張ったに違いありません。
そして、その線上に出てくるアイテムは…
フロラの顔、プシュケの右太腿(またかい)、そしてアイリス(菖蒲)です。
(snow)