キャスト(その1)

                                  
プリマヴェーラの登場人物は全部で9人。
1人を除き全てギリシア神話の神々です(厳密には、1人は人間から神に昇格した人物)。


ここで神々の呼び名について、少し予習しておきましょう。
例えば、絵の中央に右手をかざした女性がたたずんでいます。彼女の名前はヴィーナス、そう「ヴィーナスの誕生」の裸身の女神と同一人物です。ただしこの呼び方は英語表現です。
私たち日本人は、外国人の名前や固有名詞を全てカタカナで認識するので、それが何語なのかに関して、非常に無頓着です。
ですが、ヴィーナスは、ギリシア神話ではアプロディテ、ローマ神話ラテン語)ではウェヌス、ついでにイタリア語ではヴェーネレと呼ばれています。
ちょっと面倒くさいですが、そこのところをまずは理解してほしいのです。
イギリスの皇太子妃で非業の死を遂げたダイアナさんも、ギリシア神話の女神アルテミス(ローマ神話ではディアナ)の英語名です。


プリマヴェーラのテキストはギリシア神話ですから、私はギリシア名で神々を呼ぶことにします。ただし、いきなりは取っ付きにくいので、しばらくの間は英語名やその他一般的な呼び方を並記することにしましょう。ex. アプロディテ(ヴィーナス)


さて、前振りが長くなりましたが、早速プリマヴェーラのキャストを紹介していきましょう。
アプロディテの真上、目かくしされ、先端に炎が点った矢をつがえているのは、彼女の息子エロス(キューピッド)です。
女神の左隣、3人で舞っているのは、アプロディテの侍女カリス(グレース、三美神)たち。
日本語とは違い、外国語には複数形というやっかいなルールがあります。カリスが3人寄るとカリテス、英語ではesが付いてグレーシーズとなります。
さらに…カリテスの3人には、アグライア(輝き)、エウプロシュネ(喜び)、タレイア(栄え)という名前がそれぞれありますが、プリマヴェーラの中のどれが誰なのかは、私にも分かりません。彼女たちに関しては、専門家の詳しい研究もあるので、興味のある方は調べれば面白いかもしれませんが、はっきり言ってプリマヴェーラを解説する役には立ちません。
画家もその辺りの拘りはなかったのだろうと、私は考えています。絵の中の彼女たちは3人1組で1つの役割を演じているのです。


次に画面左端、杖を手にして雲を指し示しているのはヘルメス(マーキュリー)です。ローマ名はメルクリウス。
長くなってきましたので、一旦休憩。次回は画面右側の3人を紹介します。
(snow)